研究概要 |
◎白亜系〜新第三系の日本の代表的な付加体(四国南部・長野県南部・静岡県・千葉県房総半島)において,泥岩有機物の濃度・起源,最大古地温および堆積環境等の測定を行った.その結果,有機炭素濃度が最大11%までの泥岩層が確認され,最大古地温は60〜270℃と推定され,100km幅で1000年間に約1ギガトンの炭化水素が発生していることが分かった.この値は,日本で最大の油ガス田である「吉井・東柏崎ガス田」の可採埋蔵量の数倍,世界最大のガワール油田の約10分の1弱の規模に相当する.仮にこの条件を世界全体の付加体30000kmに当てはめるならば,1000年で240ギガトンの炭化水素が生成されることになり,この値は世界の石油究極埋蔵量約2兆バレル(約300ギガトン)に近い.よって付加体が「大規模な長期継続型炭化水素生成システム」として成り立つ可能性が示唆された.◎各地城の結果(基礎データ)は,以下のとおりである.(1)「四国南部」TOC高濃度層は酸化的であり陸源有機物が多かった.最大古地温は190〜240℃を示し西部で高かった.(2)「長野県南部」チューロニアンの間に酸化的な時期が訪れTOC濃度はその直後の層準で最も高い値(1.3〜3.2%)となった.最大古地温は200〜270℃を示した.(3)「静岡県」TOC濃度は瀬戸川層群の東部(0.1-0.4%)で低く,西部(0.6-0.9%)で高かった.最大古地温は東部で平均227℃,西部で平均135℃となった.(4)「千葉県房総半島」付加体のTOC濃度は古第三系で低く(平均0.16%)植物プランクトンの割合が高かった.新第三系(平均0.27%)では陸上植物の割合が高かった.最大古地温は,古第三系付加体で99〜212℃,新第三系付加体で68〜125℃,前弧海盆で57〜81℃を示した.
|