研究概要 |
平成21年度においては、以下のような成果が得られた。1,三畳紀前期の世界的なOAE(海洋貧酸素事変)は、ニュージーランドの2層序断面での検討の結果、その発現と持続時間には明らかな地域差がある事が判明した。南緯34°と北半球低・中緯度域では、OAEαがP/T境界からSpathianまで継続しているが、南半球のArrow Rocks sectionの堆積場では、長期間のOAEは発現せず、3度の短期OAEが繰り返し訪れている事が判明した。現在、Arrow Rocksの堆積場を古地磁気学的アプローチで再度検討中である。Arrow Rocks堆積場の緯度が確定できれば、より精度の高い海洋環境の復元が可能になると思われる。2,三畳紀のOAEの発達は、前期のみにとどまらず、三畳紀後期Carnian前期と中期の境界において顕著なOAEがパンサラッサ域で起こっている事が明らかとなった。遠洋堆積物の詳細な微量元素および有機炭素同位体比変動の検討により、その原因は、海洋表層域での生物生産量の急激な増加が考えられる。有機物の多量供給によって、溶存酸素の消費が促進され海洋酸欠状態になった可能性が高い。三畳紀後期のOAEは、これまで報告されておらず世界ではじめての知見となる。今後、このCarnian OAEが世界的規模での現象がどうかを、様々な地域における同年代の地層で検討し、報告論文にまとめる予定である。3,三畳紀末期のOs同位体比変動をJAMSTECの黒田氏との共同研究で検討した。その結果、三畳紀末期に大西洋のオープニングに伴う洪水玄武岩の大規模な噴火の記録が遠洋堆積物中に記録されている事が明らかになった。また、そのピークは、海洋生物の絶滅層準と一致せず先行していることが判明した(投稿中)。
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