研究概要 |
過去3年間に引き続いて、日本列島の骨格をなす年代学的に古い岩体について、その起源を明らかにすべく野外調査および採取試料の解析を行った。特に、熊本県山鹿地域の苦鉄質・超苦鉄質岩体について、明確な源岩推定を行うために記載岩石学的観察と主要元素・微量元素組成解析を行った。その結果、同地域の苦鉄質岩体は、その主要元素組成上の特徴より、主として沈積岩から成り、若干の火成岩が付随する、いわば下部地殻的特徴を有することが明確になった。また、これまでの解析によって得られた489Ma(4億8900万年)の年代学的成果については、この岩体が形成した時代を反映するものであり、日本列島の骨格を構成する岩体の中で最古のものの一つであることが、学会(鉱物科学会2010大会(島根県松江開催))や研究集会(変成岩などシンポジウム(広島県宮島開催))などにおける発表および討論の過程で再認識され、相応の評価を得た。 本年度後半は第52次南極観測隊に従事し南極にて地質調査を行った。今回の調査地域は5.5億年前後の変成岩が主として分布する地域で、その中に5.0~4.5億年の変成作用後に活動した火成岩体も点在する。そして今回の調査では、この変成作用後に貫入した火成岩がこれまで報告されていなかった地域にも存在することが明らかになった。地域的には異なるとは言え、ほぼ同時代に活動したこれらの岩体を包括して考察することで、地球史における5億年前後の変動の規模の大きさが再認識された。 また、本研究を遂行する際に得られた分析手法と技術を応用することで、大陸からの物質移動に関する雑誌論文(Miyamoto et al. (2010) "Sr and Nd isotope compositions of atmospheric mineral dust at the summit of Mt. Sefuri, north Kyushu, southwest Japan : a marker of the dust provenance and_seasonal variability" Geochim. Cosmochim. Acta)や、関連現象についての共同研究の成果(雑誌論文2件)を公表することができた。天然現象や試料を多角的に解析する視点と姿勢を熟成させるための道標的成果として、この解析が評価を得たことは研究代表者にとっては有意義であったと考えられる。
|