ビトリナイト反射率は、堆積岩の優れた地質温度計であるが、油田・炭田地域で開発された手法であるため、数100μm以上の大きな石炭粒子を対象とし、断層帯のような微小な破砕粒子の到達温度の推定は難しかった。そこで微小分析装置の開発を目指した。そのアプローチとして、本計画では分析エリアの微小化ではなく照明エリアの微小化に主眼をおいた。それは次のような理由による。たとえ分析エリアを微小化したとしても、岩石試料には様々な高輝度鉱物が遍在し、それらに照明光が当たれば強い散乱ノイズを発生させてしまう。一方で対象物以外に照明が当たらなければ、散乱の影響がないばかりか、分析エリアを絞る必要も無くなるからである。 一般的なケラー式照明装置は広視野均質光源として観察用に優れているが、光束を数10μm以下に絞ることはできない。一方で半導体の検査用やレーザ共焦点顕微鏡など特殊なケースで用いられているクリティカル照明装置は、点光源に優れているが広視野観察には向かない。これら二つの照明装置を落射顕微鏡に搭載し、広視野観察と微小部分析とを両立した。観察時にはケラー式の照日装置を用い、測定にはこれを遮断し、微小部のみを照らして反射率を測定する。これにより従来は直径100μmくらいの照明エリアが、約1.6μmまで微小化することに成功した。きわめて単純なアイデアだが、特殊な用途に限られているクリティカル照明装置を流用したことがポイントである。
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