研究概要 |
放散虫にもさまざまな藻類が共生している.もつともよく見られ,また研究されている放散虫の共生体は渦鞭毛藻類であり,プラシノ藻,黄金色藻類なども共生体として報告されている(Anderson, 1983; Gast and Caron, 1996).しかしながら,これら共生体の多様性についてはまだあまり詳しくはわかっておらず,固有の共生藻が固有の種に共生しているのか,それとも宿主による共生体の選択が自由に行われているのかどうかも明らかになっていない.そこで,これらを明らかにするため放散虫4種の超薄切片による電子顕微鏡観察を行い,これまで分子系統解析より得ていた結果と照らし合わせ,放散虫に共生する藻類の同定を試みた. 2009年5月11日〜16日, 6月8日〜13日, 10月5目〜10日, 11月27日〜3日の4回,琉球大学瀬底実験所沖合で,同大学実験船から採取した放散虫Euchitonia elegans (Ehrenberg), Dictyocoryne truncatum (Ehrenberg), Spongaster tetras Ehrenberg,およびDictyoc oryne profunda Ehrenbergとその共生体の分子系統解析および超薄切片による電子顕微鏡観察を行った結果, E. elegans, D. truncatum,およびS. tetrasのそれぞれから渦鞭毛藻,ハプト藻,緑藻の特徴を持つ共生体が確認できた.分子系統解析の結果からは, D trunc atumの共生藻は,浮遊性有孔虫の持つ共生藻類と近縁であったが, E. elegansに共生している渦鞭毛藻は,これまでサンゴやシャコガイから報告されているスエシア目(Suessiales)の種ではなく, Daugbjerg et al. (2000)で定義された狭義のGymnodinium属の種であることが明らかになった.また,これまで藻類は共生していないと考えられていたD. profundaの超薄切片を観察した結果,殻表面に数多くのシアノバクテリアが共生していることが確認された.
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