研究概要 |
年度当初の計画を順調に遂行した。すなわち,ヒノキおよびスギの樹幹試料を収集し,標準年輪曲線を作成した。標準年輪曲線と気象データとの応答関数解析を行い,中部地域のヒノキでは春期気温と前年夏気温がそれぞれ正・負に有意な相関を示した。気候復元を行い,較正関数を得た。気候復元結果の検証を行い,これまでの日本産針葉樹材による結果と調和的な結果を得た。本年度の特筆すべき成果は2点あげられる。(1)中部地域のヒノキ,秋田スギ,および朝鮮半島中部のマツ等の標準年輪曲線に主成分回帰法を適用して,環太平洋西部の広域気候復元に成功した。これは東アジア地域では初めてのことであり,本研究課題の重要な目的の一つであり,近々に論文を投稿する予定である。またこのために,韓国の研究者と共同研究を開始し,生データからの情報交換が可能となったことは,今後の当該分野の研究にとって意義深い。(2)これまでスギ及びヒノキと平行して進めてきたブナの年輪年代学研究の成果に対して,文化財科学会の奨励論文賞が授与された(平成20年6月)。また,今年度から埋蔵文化財センター等より年代測定の依頼があり,これに応じて本研究で開発した標準年輪曲線を用いた年輪年代測定を実施した。
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