研究概要 |
この年度は,下部-中部中新統久万層群の一部を調査し,それが半地溝を埋積した堆積物であることを明らかにした.そして,この久万層群の基底部は,半地溝を形成した成長断層の活動時に発達した沖積扇状地システム堆積物であり,それを覆う主部は,その断層が活動を停止し,急傾斜部が削剥された後に発達した網状河川システム堆積物であることを明らかにした.加えて,下部-中部?中新統三崎層群の広域調査もおこない,そこに海底でのスランピングに伴う未固結変形堆積物や津波堆積物とおぼしきイベント堆積物が多数存在することを確認した.こうした特徴を有する地層群は,前期-中期中新世に生じた背弧拡大に伴う伸長テクトニクスの強い影響を受けて成立していた可能性が高い.これらについて,さらなる調査をおこなうことで,今後,背弧拡大期の島弧における表層環境や古生態系の高精度復元に発展する可能性がある. このほか,成果の一部は,2編の原著論文と1編の図書,そして,5回の学会講演として公表された.とくに,ブラジル連邦共和国で開かれた第1回ラテンアメリカ生痕学シンポジウム(SLIC2010)では,生痕学の先進地である欧米以外からは唯一の基調講演者として招待され,本研究課題の主題について講演する機会を得た.また,本課題の集大成の1つとして日本堆積学会大会でも講演の予定だったが東日本大震災の影響により大会が延期となり,残念ながら講演することが出来なかった.
|