平成19年度には、南京地質古生物学研究所で標本調査を行い、Tetoria、 Nippononaia、 Pulsidisなど、多数の汽水性、淡水性二枚貝化石、その他の化石を観察した。 その結果、中国甘粛省玉門の恵回堡層群から報告された"Tetoria cf. yokoyamai"(登録番号25389-25392)は、長く湾曲した側歯がなく、套線湾入も誤認されたものであり存在しないこと、また殻の全体的な形状からもTetoriaではなく、Sphaerioides?の誤同定であることが判明した。また、この標本の母岩も、Tetoria yokoyamaiが含まれる手取層群の黒色粘土岩とは岩相が異なり、明灰色シルト岩であった。今後は、中国・遼寧省のShahai層および黒竜江省のChengzihe層から報告されている(Peiji、2003)Tetoria yokoyamaiの標本を観察し、同定を確認する必要がある。 Nippnononaia属はアジアを代表する白亜紀淡水生貝類であるが、それらは別属を含め、異なる3種群が認められる、今回の標本調査により、N.ryosekianaの系統以外はそれぞれ別属であることが確認できた。これらの発展は白亜紀初期に始まり、揚子地塊で揚子地塊系統が発展し、ブレラ地塊ではN.tetoriensis系統が発展した。バレミアン頃になると揚子地塊系統が消滅し、横ずれテクトニクスにより地塊群間の回廊的水域が形成され、揚子地塊からTrigonioides科が中朝地塊へ進出し、Nippononaia属を生み出し、そして、ブレラ地塊限定のN.tetoriensis系統が揚子地塊まで広がり、いわゆるT-P-Nフォーナ(Trigonioides-Plicatounio-Nippononaia Fauna)を形成したと考えられる。
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