研究概要 |
北海道東部の根室地域および白糠地域に分布する根室層群を対象に、古地磁気試料採取と測定を行った。このうち根室地域厚岸湾西岸に分布する同層群仙鳳趾層(Maastrichtian階)に対しては、すでに予察的古地磁気研究が実施されており、上部・下部それぞれから逆磁極層が発見されている(Nifuku、 et al., 2006)。これらは白亜紀後期のPolarity Chron 31rや30rに対比される可能性が高いが、正磁化層との境界が曖昧で、一部に正逆磁化双方が混在する層準もある。この原因はおそらく、pyrrhotiteやgreigiteといった準安定な磁性鉱物の存在にあると思われる。本年度はこれらの結果をふまえ、詳細な磁性鉱物の同定実験を行うとともに、こうした硫化鉄鉱物に適した消磁方法、たとえば比較的低いキュリー点近傍(300°-400℃)での多段階熱消磁や、交流消磁と熱消磁との組み合わせ消磁などを採用することにより、安定磁化成分の抽出効率向上を図った。磁性鉱物の同定実験には、高知大学海洋コア総合研究センターの磁気天秤・振動磁力計・極低温磁性測定装置などを用いた。その結果、含有磁性鉱物はpyrrhotiteを主とした硫化鉄鉱で、一部にmagnetiteを含む可能性が高いことが判明した。一方、白糠地域では、白亜紀/第三紀境界(K/T境界)直下からMaastrichtian階上部相当層を中心に試料採取を行った。極性反転層準同定による標準古地磁気タイムスケールとの精密対比をめざすべく、古地磁気岩石磁気測定実験を継続中である。
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