研究概要 |
沖縄本島の本部半島から北端の辺戸岬に至る秩父帯石灰岩分布域で、新たに三畳紀有孔虫化石を2地点から検出した。従来無化石だがペルム系とされていた巨大石灰岩はすべて外来性のブロックであり、野外ではほとんど無化石にみえる三宝山帯の石灰岩に岩相が酷似すること、産出は稀であるが三畳紀有孔虫化石が得られたことから、それらの大半は三畳系になる可能性が高い。それらは岩相の多様性に富んでいて、今後の化石産地の追加と化石群集組成の解明が待たれ、本研究課題の遂行、とりわけ古生代後期から中生代前期のパンサラッサにおける有孔虫古生物地理を考察する上で重要である。 舞鶴帯では、兵庫県西部、龍野-相生地域のペルム系-三畳系の層序を改訂し、上部ペルム系龍野層と中部三畳系平木層を再定義し、アニシアン前期の有孔虫化石群集の組成と年代を議論した、この群集は既知の黒瀬川帯の群集よりも古く、属種の多様性に乏しい。一方、日本の三畳紀の群集はテーチス海域のものと非常によく似ていて、地域性に富んだペルム紀の群集とは対照的である。その成果はKobayashi(2008)にまとめられている。兵庫県の下部白亜系篠山層群下部層の礫岩層に含まれている石灰岩礫と結晶片岩礫を詳しく研究した。有孔虫化石群集から石灰岩礫はすべて秋吉帯の石灰岩に由来し(Kobayashi and Adachi,2007,Nature and Human Activitiesに掲載)、泥質片岩礫の白雲母は2.7億年のK-Ar年代を示す(測定に19年度科研費使用、地質学雑誌に投稿中)ことが判明した。これらの新知見から篠山層群堆積時の後背地の地質は現在のものとは大きく異なっていたと考えられ、日本の先白亜系ナップ構造の形成過程の議論に無視できない制約条件を与えることになる。 これらのほか、トルコ共和国タウルス山地の石炭紀後期とペルム紀前期の有孔虫化石の群集解析の結果は地中海〜西アジア地域の古生物地理の復元に大きく貢献し、"Greater Indea Concept"に一石を投ずるものでもある(Kobayashi and Altiner,2008)。赤坂石灰岩では、有孔虫化石の全貌がほぼ解明し、一連の論文投稿の準備に入っている。
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