研究概要 |
この研究は、北太平洋中-高緯度、低緯度赤道域および南大洋の3つの生物地理区で掘削された時間コントロールのよい深海底コアの珪藻化石を分析することにより、浮遊性海生珪藻のCrucidenticula属、Denticulopsis属およびNeodenticula属のグローバルでダイナミックな進化過程を明らかにし、後期新生代における古気候変動との関係を解明することを目的とする。 今年度は分類学的検討が遅れている南大洋域から研究を開始した。 分類学的研究では深海底コア試料を用いて光学および走査型顕微鏡による詳しい殻形態の解析を行い、類似種との比較に留意して分類学的検討を行った。また、生層序学的研究では、深海底掘削で掘られたHole 744と745を組み合わせて、1900〜400万年前の年代範囲において平均5万年間隔で約300個の試料の珪藻分析を行い、これらコアの古地磁気年代コントロールを基に、それぞれの種の正確な出現・消滅年代と、珪藻群集内に占める頻度の時間的変化を明らかにした。 研究の結果,Denticulopsis属については、多くの種が南北両半球に分布し、いわゆる両極性分布のパターンを示すことがわかった。また、Neodenticula属については,進化の初期段階の700-600万年前ころには両極性を示すものの,500万年前より新しい時代には南半球ではこの属は絶滅し,属としては北半球のみに分布する単極性に変化することが明らかとなった. 研究成果の一部は,古生物学会のシンポジウムと珪藻学会で発表し,現在論文を投稿中である.
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