これまでに明らかにした広島県の下部中新統塩町層産ヒシ科化石について、2008年8月30日〜9月5日にドイツ(ボン)で開催された第8回国際古植物学会でポスター発表を行った(内容は次の(1)〜(8))。諸外国の植物化石研究者と議論することができ、「塩町層産ヒシ科化石は、Hemitrapaと異なる形質をもち、ヒシ科の新属とするのが妥当であり、ミソハギ科とヒシ科をつなぐ特徴をもつ化石であると考えられる。」ことについて合意を得ることができた。発表概要:(1)果実化石の中央に観察できる条線は、子房の維管束である。(2)頂環は存在しない。(3)子房上位である。(4)4つの萼をもつ。子房の基部の中央に観察される子房の背面に伸びるトンネル構造は、子房の背面に存在する萼へ続く。この中央のトンネル構造と左右の萼片の間にあるやや径が小さいトンネル構造は維管束の分布を示す。現生のミソハギの萼筒との比較研究から、この維管束は萼筒を通り、花弁へつながる維管束と考えられる。(5)萼は萼筒を形成し、成熟後あるいは化石化の過程で4つの萼片に分離し、離脱することもある。(6)萼筒の筒状部は、木化の進行が最も低い場合には独立した花弁・副萼管束が見られるが、木化か進んだ型では、側裂片側の穴がふさがれ、さらに進んだ型ではすべての穴がふさがれる。(7)萼筒は副萼をもつ。逆刺と萼の突起は維管束でつながっており、膜状の萼を形成していた。(8)子房は扁平で二軸相称性をもつが、萼筒は放射相称性をもつ。
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