研究概要 |
本年度の主な研究実績は下記のようにまとめられる。 1.CHグループに属する炭素質コンドライト中の難揮発性包有物からAlに極めて富む輝石を記載し、クシロアイトと命名した。これは従来、輝石のAlを含む最も重要な端成分として仮定されていたものであったが、本研究が天然からの初めての同定となった。また、この輝石は太陽系の最初期に生じた鉱物の一つであることも明らかになった。これらの成果についてはフランスで行われた隕石学会で発表したが、その後、フランス自然史博物館でもこの内容の招待講演を依頼され、パリで講演を行った。さらに論文としてまとめ、公表した(Kimura et al., 2009)。 2.普通コンドライト中の衝撃ベインの研究を東北大学の研究者と共同で行い、その中に含まれる超高圧鉱物の観察と分析を行った。これにより、従来、固相転移で生じたと思われてきたこれらの鉱物の中には溶融して、メルトからの結晶分化作用により生じたものがあることが明らかとなった。この成果についてはMiyahara et al.(2009)によりまとめられた。 3.普通コンドライト中の衝撃ベインには斜長石が転移して生じたヒスイ輝石の存在が知られていたが、共生することが反応式から予想されるシリカ鉱物が同定できないことが問題であった。この問題を解決するために九州大学の研究者と超高圧実験を行い、シリカ鉱物の核形成、結晶成長がヒスイ輝石より高温では数段階遅いことが原因であることを明らかにした。この成果についてはKubo et al.(2010)により発表された。
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