本研究課題は、X線小角散乱実験とメゾスコピック理論計算シミュレーションを行って粘土組織構造を観察・記載し、定量的なモデルを作成するとともに、将来のミクローマクロ力学解析(均質化法)にその組織モデルを供するものである。 ・X線小角散乱実験については、水に不飽和な粘土鉱物水和体と水に分散した粘土鉱物の2種の試料について、環境制御下においてX線小角散乱測定のための試料保持機構を開発し、実際の試料、Na置換した天然モンモリロナイト、の測定を行っているところである。不飽和系では絶乾状態から飽和蒸気圧直下までの相対湿度に対して、また飽和分散系では純水から鉱物-水比1:20までの試料に対して、X線小角散乱強度パターンの系統的な測定を行い、パターンの系統的変化が観測された。今後、これらのデータに対して、様々な解析を行うとともに、小角散乱領域について、原理からの理論パターン計算手法の開発を行い、さらに有効な解析を目指す。 ・メゾスコピック計算シミュレーションでは、粘土鉱物の、粗視化モデル、すなわち原子数数10個程度を1つの「粒子」として扱う手法の開発を行い、原子に基づく分子動力学法計算に対して、10倍から100倍の規模の計算可能なMPI並列計算コードを開発した。これを用い粘土の密度の再現性が確認された。このコードを用い、様々な条件を適用して、粘土組織形成について、数100nmのスケールのメゾスコピックな組織モデルを作成している ・これら実験と計算の両手法の結果を比較し、組織構造の記述手法の開発を始めた。 ・今後、実験・計算ともに、粘土鉱物の交換性陽イオン種類、溶液の種類を変えて、系統的な測定 ・解析を行う。
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