研究課題
昨年度は、沈み込み帯のマントルウェッジにおいて、圧力の高い沈み込むスラブ内での反応から噴火に至るまでの水と二酸化炭素の挙動に関して重要な知見を得た。具体的には、(1)スラブでの含水鉱物が分解して超臨界流体がマントルに付け加えられ、(2)同時に炭酸塩鉱物の分解反応がおこり、(3)上部マントルを上昇する過程で水と二酸化炭素による化学組成の変化があり、(4)マグマ生成時にカーボナタイトマグマとシリケイトマグマの分離が起こり島弧マグマ特有の性質を持つようになり、(5)従来考えられていたよりも高い含水量をもつマグマが減圧によって脱ガスし爆発的な噴火になる。これらの知見を新しい実験によって得ることができ、沈み込み帯での物質移動の理解を深めることができた。これらのうち、(1)、(2)、(4)は高温高圧実験を実施することにより理解が進み、(3)は天然の岩石の記載と化学分析により、また、(5)は天然の岩石に含まれる斜長石の含水量測定と、高温高圧下で実施した実験とにより理解を深めることができた。これらの中には従来の常識を打ち破るもの、とくに(1)臨界終端点の圧力と、(4)沈み込み帯でのカーボナタイトマグマの重要性、(5)沈み込み帯に噴火するマグマの高い含水量が含まれている。現在論文化を進めている。また、当初、目的の一つにあげたマグマと水の間の微量成分元素の分配を理解する実験は、実現が困難であった。原因は(比較的薄い)1mmの厚さのダイアモンド結晶を通して、軽元素の放射光蛍光X線分析を試みたが、蛍光X線がダイアモンドに吸収されるためか信号強度が低いことと、実験セルの幾何学的制約条件(入射X線と蛍光X線の取り出し角が90度の時に最大の強度を得る)の不備のため、満足な測定結果を得ることはできなかった。この失敗をもとに、さらなる実験デザインの改良に努めたい。ただし、新たな実験セルの導入には新しい予算が必要であり、その準備を開始したい。
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