上部マントルでマグマが発生し地殻へ移動するまでの過程と、その間のマグマおよび上部マントル物質の化学的変化を明らかにする事は、地球科学の根源的なテーマの1つである。そのためには、マグマが固結して出来た火山岩・深成岩やそれらの起源物質のみならず、マグマの移動経路である上部マントル物質を研究する事が重要である。そこで本研究では、世界でも有数の新鮮さを誇り、かつ、通過マグマが固結して生じたとされるダナイト脈を産する幌満かんらん岩体を対象とする。ダナイト脈とその壁岩の関係が最もよく観察できる試料を選び、その試料から構成鉱物を分離しRb-Sr同位体組成組成を得た。さらに 研究分担者が行った両輝石の微量元素組成分析結果を加え考察した結果、以下の知見を得た。ダナイト脈と壁岩の両輝石はともにサブソリダス下で化学的平衡にあり、約50MaのRb-Sr年代を示す。一方かんらん石は、両輝石の描くRb-Srアイソクロンップロット上に位置しない。この結果は、Caの拡散係数が両輝石に比べ桁違いに早い事から推測されるように、後の熱的イベントによって、元素・同位体組成比が変化している可能性を示唆する。本研究によって、これまでほとんど報告されていないマントルを通過したマグマの固結年代が示された。ここれらの内容については、日本地質学会、ゴンドワナ国際シンポジウム、岡山大学COE-21国際シンポジウムにおいて発表されている。
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