研究概要 |
本年度は,実験的アプローチから鉱物や各種岩石の電気伝導度測定を行ってきた.その結果,地震発生場の物理を理解するために多くの知見を得てきた.含水鉱物であるブルーサイトを試料とした実験からは,ブルーサイトが部分的に脱水することにより10^<-7>から10^<-3>S/mまで大きな電気伝導度変化を示す事が判明した.変成岩を試料とした実験では,地殻内の任意の温度・圧力下での電気伝導度の取得をめざした.九州の肥後変成帯からは片麻岩・塩基性岩・角閃岩を採取し,電気伝導度測定を行った.片麻岩試料は岩石内の葉状構造に垂直な方向や平行な方向に電気伝導度を測定した.塩基性岩・角閃岩では変成温度・圧力条件を越えない領域と変成温度・圧力条件を越える領域で測定を行った.実験では,0.5から1.0GPaの圧力で,温度は常温から約1100Kの範囲で電気伝導度測定を行った.特に角閃岩の実験では,900K以上で,電気伝導度が約0.001から0.1 S/mまで急激に変化することが判った.又,測定前後の鉱物の物理,化学変化を見るために,EPMAによる元素分析も行った.変成温度以下の安定領域における鉱物は定性的にも定量的にも変化が見られなかったが,900K以上に昇温した角閃石を含む試料は,脱水と関連すると推定される樹枝状結晶が見られた.これらの成果により予備実験を終了し、次年度は本実験ならびにその理論的解釈を行う予定である.
|