研究概要 |
最終年度である本年度は,実験から求めた鉱物(ブルーサイト)及び岩石(塩基性岩・角閃岩)の電気伝導度測定値の総合的な解釈のための計算と地殻内の脱水過程を模するシミュレーション計算を行った.特に地殻内の電気伝導度の定量解釈を行うために地殻に存在する流体の量や塩濃度を考慮にいれ、数値計算と岩石内電気伝導ネットワークモデル構築にむけての計算ルーチン作りを行った.実験から得られた貴重なデータを基に高電気伝導度流体と低電気伝導度鉱物混合モデルを作成した.混合モデルでは乱数用いて,流体と鉱物を配列し,岩石内電気伝導ネットワークの初期モデルを完成した。又,このモデルにおいては実際の含水岩石内部の構造と乖離しないように,フラクタル次元を解析し,その値が実際の鉱物分布の発現確率と同等のもののみをシミュレーションに利用した。最終的には,精密な電気伝導のネットワークの形成を見る為、100×102のマトリックスに電流を流すモデルを構築する事ができた。上記の計算結果やシミュレーションモデルから得られた知見は,地震発生場の物理を理解するため有用であり,現在この成果を国際学術誌に投稿する準備を進めている。3年間の含水鉱物及び含水岩石の研究から,地殻内の岩石鉱物や流体の電気伝導度の性質が明らかとなり,新たに開始された岩石鉱物内の分子動力学計算(MDシミュレーション)の共同研究と合わせて今後も研究を大きく展開できる事となった.
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