研究概要 |
平成20年度は、中部地方領家帯花崗岩類のうち、長野県駒ケ根地域に分布する「太田切花崗岩」について、2008年6月6日から6月9日(3泊4日)の間、野外における花崗岩の産状の調査ならびに試料の採取を行った。本調査により、いくつかの新しい露頭を発見し、新鮮なサンプルを大量に採取することに成功した。また、2008年5月22日から5月26日(4泊5日)、2008年9月16日、11月21日、2009年1月19日から25日(6泊7日)の間、名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻において、花崗岩試料のストロンチウム同位体分析実験ならびに研究打ち合わせを行った。 また、領家帯古期花崗岩類である神原トーナライト(95Ma)のアパタイトを用いたストロンチウム初生値解析の結果、岩体内でのストロンチウム初生値の不均質性を見いだした。全岩化学組成分析と全岩ストロンチウム同位体分析の結果を統合し、野外調査の結果とあわせて、このストロンチウム初生値の不均質は、神原トーナライトの全岩アイソクロン年代に擬似年代を生じさせたことを明らかにした。また、この不均質の原因は、領家帯変成岩類と花崗岩マグマとの様々な程度の同化作用により生じたと結論した。そして同化の程度についても制約条件を与えた。以上の研究成果を論文としてまとめ、国際学術雑誌である「Journal of Mineralogical and Petrological Sciences」に投稿し、受理された(Tsuboi and Asahara, 2009)。なお、この論文は2009年8月に公開される同誌104号に掲載される予定である。
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