大気エアロゾルに含まれる有機炭素は、雲粒核として雲形成に重要な役割を果たしているにもかかわらず、その化合物組成と起源には不明な点が多い。そこで本研究では、大気エアロゾルに含まれる糖類の濃度レベルと、有機炭素画分への量的寄与、雲粒核への寄与を明らかにすることを目的とした。本年度は、大気エアロゾル中の糖類の分析方法の確立と、濃度レベルの把握を主な課題として研究を進めた。 アルジトールアセテート法による中性糖類の分析法を大気エアロゾル試料へ応用させたところ、10-100ng/m^3のオーダーで中性糖類がエアロゾルに含まれていること、中性糖類の中ではグルコースが最も多く含まれていることが確認された。グルコース以外にも、マンノース、アラビノースなどが検出され、粗大粒子においてグルコース以外の成分の占める割合が高くなることも明らかとなった。一方微小粒子の中性糖類の大部分はグルコースで占められていた。粗大粒子よりも微小粒子に高い濃度で検出されることが多く、中性糖類の起源として、土壌や植物片などの自然発生源以外を考える必要がある。 大気エアロゾル中の有機炭素の分析も合せて行った結果、中性糖類は有機炭素のおよそ3〜6%、水溶性有機炭素の5〜10%を占めていることがわかり、エアロゾル中の有機成分、特に水溶性有機成分の組成解明において、中性糖類が重要であることも確認された。 今後は、通年サンプリングで得られた試料すべてを分析することにより、濃度レベルや化合物組成などの季節的変動を把握し、他の化学成分との比較解析により、発生源の解明を行なう予定である。
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