研究概要 |
我々は,RFトラップ中に閉じ込めた一成分プラズマが弱結合状態から強結合状態に至る過程でクーロン相互作用がプラズマの統計力学的な特徴にどのような影響を与えるかを,精密に調べることを目的として研究を行っている.プラズマの結合状態は,レーザー冷却技術を用いて,イオン温度を数千ケルビンから数十ミリケルビンの範囲で制御することによって変化させる.これにより,非常に高精度にプラズマの状態を制御することが可能であるが,極低温に冷却されたプラズマは非常に脆弱なため,その状態を非破壊で観測する方法は確立されていない.本研究は,RFトラップ中で生成された強結合プラズマの非破壊観測法の確立,およびそれを用いて中規模程度(粒子数 数十から数万個程度)の古典的強結合プラズマの臨界点近傍におけるダイナミクスの詳細を解明することを目的としている.平成20年度は,冷却イオンを非破壊観測するプローブレーザー法を確立し,レーザー冷却プラズマのレーザー誘起蛍光スペクトルの観測を行った.これによって,レーザー冷却過程におけるイオン温度の変化を初めて非破壊観測した.また,レーザー冷却プラズマのスペクトルを正確に観測することによって,冷却過程における結合状態の変化に伴い,レーザー誘起蛍光スペクトルの非ボルツマン成分に顕著な変化が生じることが確認された.この変化が,イオン-イオン相互作用による衝突広がりであるか,プラズマのダイナミクスの変化を表すのかについて検討を行っている.
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