研究概要 |
本研究は、強結合プラズマの物性に対する長距離相互作用の影響を明らかにすることを目的としている。イオントラップに閉じ込められた一成分プラズマは、レーザー冷却技術を用いてイオン温度を制御することで弱結合状態から強結合状態までプラズマを変化させることが出来るため、長距離相互作用の効果を系統的に研究するのに適した系である。しかし、レーザー冷却されたプラズマは非常に脆弱なため、その測定手段は限られており、従来用いられてきたレーザー誘起蛍光(LIF)法では観測による擾乱によって歪められたスペクトルしか得られない。我々は、微弱なプローブレーザーを用いた観測法を確立し、初めて冷却プラズマのLIFスペクトルを非破壊で観測することに成功した。これにより、スペクトル形状に関する詳細な議論を可能にした。このプローブレーザー法を用いて、弱結合状態から強結合状態へと遷移する過程でLIFスペクトルを観測し、フォークト分布を仮定してスペクトル形状の変化を詳細に調べた。その結果、弱結合-強結合の境界領域では、LIFスペクトルのローレンツ成分が異常に大きな値(約100MHz)になることが明らかとなった。この値は2体の衝突周波数(数百kHz)と比較して3桁程度大きな値である。このようなローレンツ幅の特異な変化は,強結合状態でのクーロン多体相互作用の影響が観測された初めての例と考えられ、さらに詳細な観測を進めている。
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