回転プラズマにおいて観測された台風様渦は複雑な速度分布を持っていて、定常状態でこれらがどう決まっているかを解明することが目的であった。 1.周方向ドリフトは、渦中心部で異常ExBドリフト、周縁部で通常のExBドリフトとして実験データをよく説明できるので、ドリフトを駆動しているポテンシャルの形成過程を調べた。径方向に動けない電子と中性粒子との衝突で径方向にも動けるイオンで作られる両極性電場のポテンシャルを求めることにしたが、軸方向ドリフトを考慮する必要があるので、3次元問題となり数値的に解く。3次元の数値解は簡単ではないので、はじめに、このモデルの妥当性を評価するために、実験で計測されている径方向ポテンシャルを与えて、軸方向ドリフトと径方向ドリフトを数値的に求めてみると、実験データから得られるプロファイルに近いものが得られることが分かった。しかし、径方向ドリフトの反転する位置と、周方向ドリフトから求められる渦度の反転の位置が対応していない。また、軸方向の分水嶺の位置を一義的には決められない。 2.渦の中心部と周縁部を結ぶ境界層での大きなイオン密度のジャンプは、回転の遠心力と圧力及び動圧(径方向ドリフトによる)がバランスするように決まっていると考えて、イオンの運動方程式をとくと、実験をほぼ再現する結果が得られた。ただし実駿結果の密度変化の勾配のほうが急峻である。 3.実験から得たポテンシャルから、周方向ドリフト、軸方向ドリフト、径方向ドリフト、密度分布が求められ、それらが実験データとほぼ一致することが確認されたので、モデルに大きな間違いはないと思われるが、ポテンシャルの決定、つまり3次元偏微分方程式の数値解は、来年度の課題として残った。
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