研究概要 |
今年度においては,レーザークラスター相互作用のためのシミュレーションコードの3次元化・並列化と実験結果との比較,クラスター生成用実験装置の改良と格子状クラスター生成実験,が主な成果である。 シミュレーションコードについては,昨年度開発した衝突・電離過程を含んだ粒子コードの3次元化とそれに伴う並列化を行い,2次元シミュレーション結果との比較を行った。コードの3次元化は2次元に比べてメモリ量が飛躍的に増大するため,対称性を利用して低減した。さらに計算の並列性を高めるため,計算手法を改良して繰り返し計算の独立性を向上させた。完成したコードを用いて超短パルスレーザーを球状クラスターに照射した際の電子のエネルギー吸収率や発生する高速イオンのエネルギー分布を計算した。この結果,2次元シミュレーションの結果に比べエネルギー吸収が低く,これに伴って高速イオンのエネルギー分布も異なることがわかった。 格子状クラスタープラズマ生成実験では,昨年度完成したモバイル真空チャンバー内に設置した微粒子供給装置および放電ステージの改良と,放電用電源の改良を中心として行った。直流電源による放電ではうまく微粒子プラズマを空間に閉じこめることができなかったが,冷陰極放電管用の45kHzインバータを利用した高周波電源を用いて放電させることにより微粒子プラズマの空間固定に成功した。ただし電源の容量が足りず,10分程度しか放電を持続させることができなかったため格子状クラスタの写真撮影はできなかった。C60フラーレンのクラスターイオンビームに関しては昨年度完成した回転電場型質量フィルタの特性について基本的なデータを得ることができた。
|