研究概要 |
負イオン源においてカスプ損失幅を解析する上で。壁近傍でのシースの役割は重要である。壁近傍でのシースの解析には、Emmertらのプラズマーシース方程式およびプラズマ方程式を用いた解析方法(G.A. Emmert, R.M. Wieland, A.T. Mense and J.N. Davidson, Phys. Fluids 23, (1980)803.)を用いる。Emmertらの解析方法は、カスプ磁場でのシースにとどまらず、いろいろな状況における壁近傍でのシースの解析に応用することができる。本年度は、表面生成負イオン引き出しの物理機構が未だ明らかになっていないことに着目し、プラズマーシース方程式を用いて負イオン引き出し領域近傍でのシースの解析を行った。 表面生成負イオンにおいて、引き出し口のプラズマグリッド(PG)で生成された負イオンは、プラズマと壁との間のポテンシャルの差により加速される。一般に固体壁近傍のプラズマに生成されるシースポテンシャルは、PG表面で生成された負イオンをイオン源内部方向に向かって加速する。しな機構が必要となる。そこで、プラズマに加えて負イオンを考慮することによりプラズマーシース方程式を導き、プラズマ領域とシース領域におけるポテンシャルを自己矛盾なく解くことにより、引き出し領域近傍でのシースの解析を行った。この解析により以下の結果を得た。 1、引き出し領域近傍でのポテンシャル分布は、表面生成負イオンの生成量や負イオンエネルギーの強さにより変化する。 2、負イオンの生成量が多く負イオンエネルギーが低い場合、PG表面近傍に負のポテンシャルのピークが現れる。 これらより、負イオンがPG表面に戻され装置から引き出される可能性があることを示した。今後は、この解析方法を応用することにより、カスプ磁場でのシースポテンシャルを求め、プラズマのカスプ損失幅を求める予定である。
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