研究概要 |
計算量の少ない統計的衝突モデルとして,修正したランジュバン方程式に基づく新しいモデルを開発した.この衝突モデルをそのまま背景電子とビーム電子の衝突緩和に適用すると,それぞれが独立に平衡状態に緩和するため,緩和の初期過程において全エネルギーが保存しない.そこで,背景電子とビーム電子を判別し,背景電子だけの温度を計測し,その温度を平衡温度として衝突計算するようにした.また,全エネルギーと全運動量が保存するように,背景電子の計算に補正項を追加してモデルを改良し,この欠点を克服した.そして,この衝突モデルを粒子コードに組込み,超高強度レーザーと高密度プラズマの相互作用における衝突効果を調べた.この結果,衝突計算により背景電子の温度が上昇し,電子密度プロファイルの急峻化が妨げられ,レーザープラズマ相互作用でより多くの高エネルギー電子が発生することがわかった. また,昨年度に引き続き,コーン材にZの異なる物質(Au, Cu, Al, CH)を仮定し,コーンチップ内での高速電子輸送を考慮した2次元Fokker-Planckシミュレーションにより,コア加熱に対するコーンの影響評価も行った.この結果,同じ電子ビーム条件下では,コーンチップ内での衝突の影響が小さい低Zコーンの場合が,最もコア加熱効率が高くなることが示された.実際,Auコーンに比べCHコーンの場合は,温度が40%程度高くなることがわかった. 更に,衝突・電離過程を含む粒子コードの3次元化・並列化を行い,レーザークラスタープラズマから発生する高速イオンのエネルギースペクトルを解析した.また,高精度ハイブリッドコードの3次元化を行い,これを用いて高速電子ビームが高密度プラズマ中を伝播する時のワイベル不安定性が背景プラズマの電気抵抗にどの様に影響されるかを調べた.
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