研究概要 |
修正したランジュバン方程式に基づく計算量の少ない統計的衝突モデルを開発し,高速電子の衝突計算に応用できるよう改良した.そして,この衝突モデルを1次元相対論的粒子コードに組込み,超高強度レーザーと高密度プラズマの相互作用における衝突効果について,衝突効果の有無と高速電子に対する人工的なクーリングの有無を組み合わせた4つのケースについて調べた.この結果,衝突効果を含めるとクーリングには関係なく,衝突により比較的低エネルギーの電子が減少したため,高速電子ビームの立ち上がり時の強度が小さくなることがわかった.クーリングを施した場合,この違いを除いて,衝突効果による顕著な差は見られなかった.一方,クーリングをしない場合,衝突効果を含めた方が,高エネルギー電子がプラズマ中を循環し,繰り返し衝突の効果を受けるため,全般的にビーム強度が下がり,MeV程度までのエネルギーを持つ電子数が少なくなることがわかった. また,加熱に対する輸送過程を介してのコーンの影響を2次元フォッカー・プランクシミュレーションにより評価した.高Z物質をコーンに用いた場合,高電離したイオンによる散乱や背景電子との衝突による減速とともに,コーン材と爆縮プラズマ間で抵抗率の空間勾配が大きくなるため強磁場が発生し,この磁場により大きな散乱が生じることがわかった.このため,わずか10ミクロン程度のコーンチップ内での輸送により,高速電子のビーム特性(強度・角度広がり)が急激に悪化し,加熱効率が低くなることが明らかになった. 更に,3次元高精度ハイブリッドコードにより,ワイベル不安定性に対する抵抗の効果を調べた.その結果,抵抗の無い場合より,抵抗のある場合の方が,ビーム伝播に垂直方向の変動が速く成長することがわかった.
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