研究概要 |
炉心級トカマクではシンクロトロン放射損失が大きくなることが最近指摘されていることから、電子の相対論的取り扱い(球対称相対論的マックスウェル分布)、シンクロトロン放射の伝搬方向、プラズマ閉じ込め装置の磁場構造・トーラス形状を考慮した放射輸送方程式を解くことにより、シンクロトロン放射損失の評価を行っている。一昨年度の評価から、ポロイダル方向のシンクロトロン放射強度の依存性は少ないことがわかったので、ポロイダル対称性の仮定のもとで水平面上でのシンクロトロン放射損失から全放射量を評価している。昨年度は真空容器内壁での反射及びモードスクランブルの効果を評価し、反射やモードスクランブルの効果は全シンクロトロン放射損失の評価に重要な影響を与える。今年度は反射やモードスクランブルの効果の影響を避ける為に、反射やモードスクランブルは無いと仮定して全シンクロトロン放射損失のプラズマパラメーター依存性を評価した。全シンクロトロン放射の電子温度依存性は電子温度の1.5乗から2乗を示している。電子密度が低い場合は1,5乗に近く、電子密度が高い場合は2乗に近くなる。もしプラズマが黒体であるならば、ステファン-ボルツマンに公式に従うはずであり、その場合は電子温度の4乗の依存性である。電子密度が高くなるとベキ数が上がるのは、電子密度が高くなると、高い周波数領域でも光学的に厚くなり、黒体放射になる周波数領域が増え、黒体放射の4乗に近づくために、ベキ数が上がると考えられる。全シンクロトロン放射の電子密度依存性はほぼ電子密度の0.4乗から0.5乗を示し、電子温度が高くなると、ベキ数の値は増えて行く。全シンクロトロン放射のトロイダル磁場依存性ほぼトロイダル磁場の2.5乗を示している。 全シンクロトロン放射損失を低減したい場合磁場を下げる事が有効であり、これは現在経済性の観点から核融合炉の設計が低磁場へ向かっている事と整合している。
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