研究概要 |
この研究ではチャームクォークと反チャームクォークの束縛状態であるチャーモニウム(特にJ/ψ,χc,ψ'状態など)がクォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)相中で、それぞれが散乱状態としてバラバラになってしまう「チャーモニウム状態の消失温度」を有限温度格子QCD数値シミュレーションによって求める事を目的としている。 これらチャーモニウムの消失温度は重イオン衝突実験でのQGP生成を示す重要なシグナルの一つである「J/ψ抑制」のシナリオを議論する上で必要となるパラメータである。 20年度までめ計算ではまず動的クォークの効果を無視した近似でのテスト計算を行った。固定格子間隔の計算でゼロ温度を含め、T/Tc=0.88-2.3までの6点の温度で(1)状態のエネルギーの境界条件依存性、(2)Bethe-Salpeter波動関数の体積依存性、の計算を行った。状態のエネルギーの計算には相関関数行列の対角化法を利用した。 さらにfull QCD計算め準備としてfull QCD有限温度ゲージ配位の生成を行った。 このfull QCDの配位はCP-PACS/JLQCDによって行われたゼロ温度でのメソンスペクトラムの研究で採用されたパラメータを用いている。非摂動改良されたウイルソンクォーク作用と岩崎ゲージ作用の組み合わせで、格子カットオフが約3GeVで、クォーク質量がパイオン質量にして約600MeVに相当する。格子サイズは323xNtで空間体積はおよそ(2fm)3となる。温度はNt=16,14,12,10,8,6,4で、T/Tcでは0.9から3.0に相当する。これらはそれぞれ25000traj.ほど生成され、クーロンゲージに固定して、対角化法への準備を行った。 これらを用いて21年度は最終目的であるfull QCDでのチャーモニウムの消失温度の計算を実行に移す予定である。
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