研究課題
小惑星イトカワの探査データを,昨年度に開発した不規則形状小天体の解析のための地理情報システムGISソフトウェアで取り扱い可能なマッピングデータとして整理した,このデータセットには斜度情報,近赤外分光計による反射率情報,可視域の輝度情報などが含まれる.本ソフトウェアを用いて小惑星イトカワ上に存在する衝突地形の抽出を行なった.その結果,イトカワ上には直径2m以上のクレーターの可能性がある地形が38個存在することが確認された.このクレーター候補地形は通常のクレーターのような円形の凹地形の他,土砂によって平坦に埋まった円形地形,そして小惑星の全体形状に対して円ないしは円に近い形状の切りかけ状の地形が含まれる.これらのクレーター候補地形はこれまで研究されている小天体上のクレーターと比較して非常に浅く,非クレーター地形も含まれている可能性がある.また一方でイトカワのような天体上でのクレーター形成の物理過程についての見直しを迫る結果でもある.これら候補地形のクレーターとしての確度評価を踏まえた上で,イトカワの衝突年代を算出したところ,典型的な値として75Myrという年代を得た.これはイトカワの軌道履歴とも整合性がある.また,クレーター形成と連動して生じる表層の物質移動と宇宙風化の進行度との関係についての研究も進めた.その結果,宇宙風化の進行していない地域には,急斜面・クレーターリム・地形上の稜線や頂点が該当することが明らかになった.これらの研究成果をもとに,小惑星イトカワの進化履歴が明らかになったほか,小惑星の地質学的プロセスについての理解が進展した.
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