1、分子クラスター構造最適化法の改良 分子配向の自由度によりクラスターの安定構造の数が増加するため、それの構造最適化は困難である。研究の第一ステップとして、分子配向の効率的な最適化法を検討し、クラスター構造最適化法の効率化を目差した。分子数が20程度以下では、すべての分子の配向をランダムに変化させて、それを初期値として準ニュートン法で局所最適化すると最適構造を求める確率が向上した。一方、20以上の分子から構成されるクラスターでは、同様の方法により新しい局所安定構造を求めることはできたが、より安定な構造を生成することが困難であった。分子の配向に対してランダムな変化を実行する回数、また、配向を変える分子の数について検討し、最適化法を効率化する条件を求めた。 2、最適化法の二酸化炭素クラスターと水クラスターへの応用 経験的ポテンシャルを用いて、前者の場合には分子数が2から40まで、後者の場合には25までの最適化計算を行った。 (1)二酸化炭素クラスター:このクラスターについては、系統的に構造を研究した報告がなく、今回得られた構造のうちの約30のクラスターの構造は新規のものである。レナード・ジョーンス(LJ)ポテンシャルに従う原子クラスターの構造と比較すると、分子の異方性により、二酸化炭素クラスター構造のサイズ依存性における規則性がLJクラスターより低下していることがわかった。 (2)水クラスター:最安定構造と分子配向(水素結合の向き)が異なる多くの局所安定構造が得られた。そこで、氷素結合の数を変えずに、それの配向のみを変化させる手法を最適化法に導入することにより、最適構造を求める効率を改善した。また、既報の結果よりエネルギーの低い最適構造を求めることに成功した。
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