1.分子制御実験 (1)シュタルク分子制御 永久電気双極子を持つ分子ならびにリュードベリ状態にある分子について、高速にスイッチされる不均一電場を用いて並進速度を冷却する手法を報告し、最適化した不均一電場を発生させる電源を製作した。この成果は3件の国際学会で招待講演を行った。 (2)画像観測法による配向分子の光解離実験 異方的分極率を持つ分子を電場で制御しその解離を画像として観測するための予備実験を行った。 2.多環芳香族炭化水素とナノ炭素構造の電子・振動状態 (1)ナノ炭素構造の分散関係と表面における非弾性散乱 炭素6員環が数列につながったカーボンナノリボンの振動分散曲線を構築して振動の異方的な分散を報告した。 zigzag端をもつナノリボンの振動は、音響分枝、音響高調波、光学高調波、CH振動に完全に分類されることを示した。この報文は、抄録雑誌Virtual Journal of Nanoscale Science & Technologyに採択され注目を集めた。また、多環芳香族炭化水素(PAH)の電子・振動状態とのつながりを探索するため、環が4つ以上あるPAH分子(ピレン、クリセン、コロネン)の気相衝突イオン化の研究を行った。 (2)ベンゼン誘導体のラマン強度 異方的分極率を持つ分子としてベンゼン誘導体を取り上げ、低振動数モードのラマン強度を研究した。誘起分極率は分子内回転によって大きく変わることが見出された。ベンゾトリハロライド、エチルピリジン、パラシクロファン、チオアニソール誘導体について、系統的なラマン強度の増大に関する知見が得られ、置換基と環の電子的相互作用に起因すると結論された。
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