今年度は、以下の項目を行なった。 (1)電子刺激脱離-パルス分子線複合装置の開発と整備を行なった。装置はほぼ完成し、現在は、主にパルス分子線による、COと水素のパルス吸着、およびパルス吸着させたメタノール分子の解離過程の測定を行なっている。さらに購入した窒素レーザーを用いた光脱離測定系についても調整を行なっている。 (2)上述の装置の測定結果と対応する動的モンテカルロシミュレーションのプログラム開発を行なった。このプログラムの開発にあたっては、表面二次元系でよく採用されている格子点系ではなく、連続座標系に基づく計算を採用している。これをRu(001)表面上のCO吸着、水素吸着、メタノール解離過程に適用している。COの昇温脱離、水素の昇温脱離の測定結果は温度の関数として特徴的な振る舞いを示すが、その挙動を再現することができた。また、吸着種の示す超構造の温度変化についても正しく記述することができた。 (3)表面設計した構造を決定する手段の開発のために、VanHoveらが開発したテンソルLEED法のプログラムを遺伝的アルゴリズムによる表面構造探索のアルゴリズムに組み込んだ自動解析プログラムを作成した。VanHoveらのテンソルLEED法は、多くの研究者に使用されているプログラムであるが、参照構造から出発して、数ステップの最適化を行なうプログラムが公開されている。表面構造再構成が起こるような複雑な系では、グローバルな最適解を求めるために工夫を行なう必要がある。本プログラムをMo(112)上にリンを吸着させた系について構造解析を進めている。 (4)表面設計法の新規方法としてイオン液体を酸化物担体に固定化する研究・コバルト酸化物ナノ粒子の合成を進め、構造解析、触媒反応への適用を行なった。
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