平成19年度は計画初年度であるため、まず実験装置の設計を行った。準安定フラグメントを検出する方法として、大きく分けて3種類の候補の中から、粒子線検出器マイクロチャンネルプレートを用いて準安定フラグメントを直接検出する方法を採用した。この方法では、不必要な電子、イオンを電場または磁場により取り除く必要がある。この電場または磁場は同時に、目的とする準安定フラグメントを失活させ、検出不能にさせてしまう効果があるため、荷電粒子軌道計算ソフトによる電子、イオンの軌道計算、および、電場中での準安定フラグメントの反応速度計算を通し、装置デザイン、電場の最適化について詳細に検討した。検討の結果、フラグメントの軌道に沿って電場による荷電粒子除去領域を設置し、その長さを長く取ることにより、かける電場をなるべく弱くするようなデザインが最適との結論に達した。以上のような設計に基づき製作した装置を用い、高エネルギー加速器研究機構放射光科学研究施設にて対称性分離分光実験を試行した結果、水素分子の光解離実験において、準安定水素原子を検出することに成功した。しかし、信号には未だ多くの荷電粒子、および、けい光も含まれており、分光実験としては不十分である。今後、電場、アパーチャー系などの再設計が必要と考えられる。空間の一方向で準安定中性フラグメントの観測に成功した例は、放射光実験ではこれまでになく、本研究で確立を目指す対称性分離分光実験は、振動子強度が集中する真空紫外域の光励起ダイナミックスを明らかにする方法として非常に意義深い。
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