研究概要 |
多価イオンと固体の相互作用において,多価イオンのもつ膨大な内部エネルギーがどのように消費されるのか,が本研究の基本テーマであり,特にそのなかでも固体表面からの発光現象を定量的に捉えることが具体的な目標である. 具体的な成果として多価イオン照射にともなうbis-MSB薄膜からの紫外線発光を観測し,X線放出との強度相関を観測したこと,タングステン表面に多価イオンを照射した際のX線発光を観測したこと,さらには,水素化シリコン表面に多価イオンを照射すると水素原子のライマン線およびバルマー線が光ることを発見した.第1者に関しては論文執筆が終了している.そこではこの「蛍光」のメカニズムについて論じている.結論は2次電子による間接的励起過程がその原因である.第2者についてはすでに論文発表済みである.特に多価イオンの内部エネルギーがおよそオージェ電子放出とX線発光に分け与えられると考えた時に,多価イオンのK殻に空孔がある時は,それは完全にX線放出によって埋められること,M殻に孔があるときは中性原子にくらべてかなり大きな収率でやはりX線による穴埋めがおこることを定量的に観測することができた.第3者については,水素分子形成を介して,その後の解離過程を考慮しないと発光現象が説明できないとの結論に達し,論文にまとめているところである.
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