研究概要 |
本研究の目的は,固体円二色性(CD)測定と固体高分解能NMR測定を組み合わせ,同位体ラベルしないキラルな固体試料の立体構造解析の方法を確立することである。固体CD測定の目的は,固体状態における多結晶粉末あるいはフィルム状のポリアミノ酸の高次構造の決定である。これらの試料を用いてα-ヘリックス,β-シート,あるいはランダムコイルなのかを決定することができれば非常に有効な分子構造解析手段となる。CD測定は高次構造の決定にはなくてはならない重要な手段であるが,詳細な分子構造解析は困難である。したがって,多結晶粉末試料や無定形試料の固体構造を解明する唯一の手段といって良い固体高分解能NMRとの併用が不可欠となる。ポリ(γ-グルタミン酸)をモデル試料として,^<13>C固体高分解能NMRならびに固体CD測定を行い高次構造解析を試みた。一方,塩基性および酸性pHの水溶液からキャスト法で作成し凍結乾燥したポリ(ε-リジン)キャストフィルムの^<13>C固体高分解能NMRスペクトルが,それぞれフリーおよび塩酸塩型ポリ(ε-リジン)粉末の非晶領域のスペクトルと一致することを見いだした。さらにこれらの試料の固体CD測定を行い,スペクトルがpHに依存しており,固体NMRを用いたポリ(ε-リジン)粉末試料の分子構造解析から明らかになったフリーおよび塩酸塩型ポリ(ε-リジン)の主鎖のコンフォーメーションと矛盾しないことを見いだした。
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