研究概要 |
1)クロラニル酸-フェナジン1:1化合物の強誘電体相である相IIと相IVについて,単結晶X線構造解析を170Kと93Kで行い,両相が同じ空間群P21で記述できること,さらに,相IIでは中性分子からなる分子性化合物であったのに対し,相IVではクロラニル酸よりプロトンがフェナジン側へ移動し,イオン性分子からなるイオン性結晶になることを明らかにした.また,このプロトン移動を伴う中性-イオン性相転移は35Cl核四極子共鳴および1H-14N核四極子二重共鳴の温度変化の実験でも明らかにされ,プロトン移動に関する同位体効果も観測された.そして,クロラニル酸-フェナジン間のO.H.N水素結合が強誘電性および固相転移に大きな影響を与えていることを明らかにした.クロラニル酸-フェナジン1:1系と同様の結晶構造をもつと予想される,クロラニル酸-キノクサリン1:1化合物の95Kにおける結晶構造をX線回折より求めた.これらの知見は欧文誌,Acta Cryst.およびJ.Phys.: Condens. Matterに発表した. 2)クロラニル酸-アミン化合物の水素結合系の構造を調べるためにアデニンおよび4,4'-ビピペリジンを取り上げ,その結晶構造をX線回折より求めた.クロロ-ニトロ安息香酸-アミン系におけるN.H.O水素結合の探索のため,2-クロロ-4-ニトロ安息香酸と4,4'-ビピリジ化合物の結晶構造をX線回折より求めた.以上の結果は欧文誌,Acta Cryst.に発表した.
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