研究概要 |
1)クロラニル酸--1,2-ジアジン(1:2)およびクロラニル酸--1,4-ジアジン(1:2)化口物におけるN...H...O水素結合系を調べる目的で、単結晶X線回折と核四極共鳴の実験を行った。両化合物において水素結合中の水素原子は無秩序状態にあることをX線結晶構造解析により明らかにした。また、その温度変化(測定温度範囲:110-260K)より、クロラニル酸--1,2-ジアジン(1:2)化合物ではO原子側の水素原子の占有率が温度上昇とともに大きくなることを見出した。一方、クロラニル酸--1,4-ジアジン(1:2)化合物においては水素原子の占有率は温度に対し殆んど変化しないことが分かった。クロラニル酸--1,2-ジアジン(1:2)における水素移動は塩素35核四極共鳴の温度変化の実験からも確認され、共鳴周波数の温度変化についてO原子側とN原子側の水素原子のポテンシャルエネルギーの差に基づいて議論を行った。これらの結果は、欧文誌Acta Cryst.およびPhys. Chem. Chem. Phys.に発表した。また、クロラニル酸--ピリジン誘導体系の水素結合系構造を調べるため、2-,3-,4-シアノピリジン、2-,3-,4-ヒドロキシピリジン、2-,3-,4-アミノピリジンを取り上げ、その結晶構造をX線回折より求めた。結果の一部はActa Cryst.に発表した。 2)クロロニトロ安息香酸--ピリジン誘導体の系における短いN...H...O水素結合とプロトン移動を行う系の探索を目的として約40種の化合物を合成し、その結晶構造をX線回折実験にて明らかにした。その結果、クロロニトロ安息香酸--キノリン及びクロロニトロ安息香酸--フタラジン化合物の系に、N...H...O水素結合の水素原子が無秩序状態にあるものを見出した。クロロニトロ安息香酸--キノリン系の結晶構造に関する知見は第2回分子科学討論会2008で発表し、現在、論文を作成中である。
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