異なる2つのバルク相が接する境界、すなわち界面は、バルク相とは異なる構造や性質を示す厚さが数nmのナノ空間である。ベシクル、エマルション、生体膜などのより複雑で柔らかい分子組織体の多くは気/液や液/液界面などの柔らかく変形可能な界面(ソフト界面)における吸着膜(ギブズ膜)を基本構造としている。従って、ソフトマテリアルの創製やその構造と機能の相関、性質の正しい理解にはソフト界面ギブズ膜の構造解明が不可欠である。本課題研究では、ソフト界面でのドメイン存在による界面不均一構造の安定性をドメイン境界線に働く線張力の観点から解明することを目的とし、界面張力法による巨視的観点とシンクロトロンX 線反射率法による微視的観点から研究を展開した。その結果、ドメインの分散安定性を支配する因子として、ドメイン線張力以外にドメイン境界線における双極子間斥力、ドメイン間相互作用、さらに、ドメイン周囲における溶媒と吸着分子との混合エントロピーが重要であることが判明した。さらに、ソフト界面における自発的多重膜形成においては、高さ方向に不均一な新たなドメイン構造を見出すに至った。
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