研究概要 |
弱い電子受容体にアニオンとなる置換基を導入することにより弱い電子受容性を示すアニオン(AA)を作成し、それを対イオンとするドナー・アニオン型有機伝導体を作成したときに、もしこの電子受容部がx(x<<1)だけ電子を受け取れば、そのx分だけ伝導性ドナー層にホールがドープされることになる。しかし、今までに得られたAAのBEDT-TTF錯体では、ホールドープ効果を確認することは出来なかった。今までに得られたAAのアクセプター性が弱いためと考えられる。そこで19年度に得られたAAよりもさらにアクセプター性のよいAAの開発を行った。N,N'-dicyano-1,4-benzoquninone diimine(DCNQI)という有名な強いアクセプターがあるが、そのシアノ基2つをスルホ基に置き換えた、N,N'-disulfo-1,4-benzoquninone diilnine(dsqi)の合成に成功した。このアニオンのPPh_4塩の還元電位を測定したところ、+0.14V(in PhCN vs.Ag/AgCl)であり、クロラニル(-0.29V)よりも0.43Vも高いアクセプター性を示した。このアニオンとBEDT-TTFとの錯形成を行った結果、予備的なX線構造解析により、(BEDT-TTF)_4dsqi・4H_2Oが得られたことが判った。しかし、dsqiのアクセプター部に電子が移動しているかどうかは今のところ明らかに出来ていない。21年度はこの塩の結晶構造の確定、電子移動の有無の確認を検討している。また、他にも2種類の新規アニオン(2-sulfbmethylamino-3,5,6-tribromo-1,4-benzoquinone,2-sulfomethylamino-3,5-dibromo-6-chloro-1,4-benzoquinone)を作成し、それぞれが2種類のBEDT-TTF錯体を与えたが、やはりホールドープ効果は確認されなかった。
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