|
固体水素は分光実験(ラマン散乱、赤外吸收)から三つの存在が指摘されている。分子が自由に回転しているI相(低圧相)から非等方的回転状態のII相を経て、III相で分子配向秩序が完成するものと考えられている。結晶構造については、I相で中性子及びX線回折実験からhcp講造であることが明らかにされている。II相について二つの回折実験が行われており、いずれも分子の重心の位置はhcp格子点上からほとんど移動していないと報告されている。III相の回折実験は全く行われていない。しかし、II-III相転移では水素分子の伸縮振動の波数が不連続に変化するため、比較的大きな構造変化があるものと期待される。そこでラマン分光で分子の伸縮振動をモニターし、II-III相転移を確認しながら、回折実験を行った。
SPring-8 BL10ステーションでin situにラマン分光を行いながら、X線回折実験を行った。伸縮振動の波数の不連続から100KではII相とIII相は155-GPaから165 GPaの間で共存することが明らかとなった。従って、この転移は一次の相転移である。一方、回折実験では今回始めてIII相のX線回折パターンを得ることがきた。しかし、回折線のd-値は転移を跨いで連続的に変化しており、特に異常は認められなかった。
|
