一酸化窒素を対象分子とし、 A状態を経由する二段階励起法によって波数約60000cm-1以上に存在するリュードベリおよびバレンス状態を回転量子数まで選別して励起し、レーザー光同軸方向に発せられる誘導放射光を検出し、電子構造ならびにエネルギー緩和のダイナミクスを追跡することが目的である。 一酸化窒素の8sおよび8fリュードベリ状態からの遠赤外誘導放射光が当研究室ですでに検出されていることから、さらに高い9sリュードベリ状態を励起したが、誘導放射光を検出することはできなかった。その理由として、(1)9s状態が前期解離性を有するため増幅を起こすだけの十分長い寿命を持っておらず、増幅に必要な占有数を保持できないこと、(2)9s→8p遷移に基づく誘導放射が起こっていたとしても、8pリュードベリ状態が強い前期解離性であり、それ以後キャスケード的な放射緩和を起こすことがない等の理由が考えられる。実際A状態から直接8p状態を励起した場合でも誘導放射は観測できず、これは8p←Xの真空紫外吸収バンドの線幅が既に広がっていることと矛盾しない。 B(v=14)状態からの赤外誘導放射光を検出しつつ、励起レーザー光の周波数を掃引し、B(v=14)状態のエネルギー準位構造を調べた。その際波長標準としてヨウ素分子の蛍光励起スペクトルを同時測定することにより、項値(cm-1)を小数点以下二桁の精度で決定し、近傍のリュードベリ状態との相互作用を明らかにした。
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