本研究では、フラグメント分子軌道(FMO)法の開発を継続し、下記の成果を得た。 (1)蛋白質などの巨大分子の量子化学計算を可能とするFMO法に分子間と分子内基底関数重ね合わせ誤差補正法(BSSE)を開発した。二量体の計算で各フラグメントに基底関数を置くが、残りのフラグメントの影響が入らない。この補正では二量体が真空中状態のまま計算される。標準のBSSEの計算法を適用できる分子集合体等を対象として分子間相互作用を小分子間BBSE標準法である均衡補正とFMO法で比較した。精度計算検討中、他者により同様な課題の論文が先に出た為、改良又はこれからの開発と応用計算の方針を考え直している。 (2)FMO/BSSEの有用性を調べるには大きい基底関数の計算が必要であるが、従来の方法ではその基底で精度等の問題があった。その為に、分離結合の適応固定軌道法(AFO)を開発し、第一原理との誤差が削減出来た。従来の方法で応用不可能な共有結晶系としてzeoliteに於ける小分子吸着適用に成功した。別課題で多糖のheparinの水和電子状態を研究した。 (3)FMO法は蛋白質と基質の相互作用を始め、創薬や分子動学等に幅広く開発され、応用が進んでいる。理論と適用の進歩を纏めて、FMO法の論評を特殊論文として発表した。使用者を増やさんが為、FMO法の著書を編集者として著作し、そこで三章共著した。 (4)FMO法に基づいた励起状態計算法を開発し、光合成系と蛋白質又は分子結晶に適用した。一重項励起状態構造最適化計算法を実装した。又は、FMO法の勾配を改良した。 (5)開発したFMO法をGAMESSに組み込み、平成19年12月と21年1月に二回無償公開した。
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