研究概要 |
本研究は芳香環をつづら折り状にリンカーでつないだ折りたたまれた構造を持つ芳香族フォルダマー分子を合成し,その分子構造がどのように円二色性などの光学特性に反映されるのかを考察することを目的としている。またイオン間相互作用を利用した超分子的なπ系の積層化も併せて検討することも目的の一つである。 1,π系カラムを利用した遠隔誘起CD:中央部にフェニレン,両末端にアントラセン環を有するS字型の分子形状を持つフォルダマー分子を合成し,その構造を単結晶X回折により検討した。窒素上の置換基に依存してジグザグ型とらせん型の2種類のS字型フォルダマー構造が存在することを明らかにした。また窒素上にキラル置換基を有するらせん型ではい誘起CDの発現が見られ,アントラセン環が1個からなるコの字型分子よりもその強度は強くまた極大波長は長波長シフトすることを明らかにした。これは上下のアントラセン環が中央部のフェニレンを介して励起子相互作用することに由来するものと考えられる。 2.イオン間相互作用を利用した超分子的なπ系の積層化:中央部にアントラセン環を配し,両端に疎水性の長鎖アルキル基を置換基に持つイミダゾリウム基を置換した両親媒性化合物を合成し,その自己集合を蛍光スペクトルの利用により調査した。無極性溶媒中ではイオン間相互作用により集合しアントラセン環同士が向き合いエキシマー発光が観測され,有機極性溶媒中では溶媒和により分子が集合せずモノマー発光がみられた。また,水溶液中では疎水相互作用が優勢となり自己集合しエキシマー発光となるなど,きわめて特異的なソルバトクロミック特性を見出した。
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