研究概要 |
「自己組織化能を有する分子」が集合した超分子構造体の研究が注目されている。これは、超分子構造とその物性に基づく新たな高次機能が期待されるためである。我々は、2-フェニル-1,3,4オキサジアゾール環状四量体を合成し、物性を調査した。この結果、ナノチューブ構造を有する超分子ワイヤが、自己組織化によって生成することを発見した。ナノチューブの中央には水が包接されており、水分子が一次元に整列した構造が観測された。閉じ込められた空間に一次元に整列した水の物性研究は、ほとんど行われていない。このため、この水の性質はとても興味深く、新たな機能が期待される。今年度は、超分子ワイヤがナノチューブの集積体であることをXRD測定によって確認した。室温と-100℃において、マクロサイクル間の面間距離は、それぞれ3.453と3.411Aであった。この結果から、温度変化によって分子ワイヤが約1%伸縮していると考えられる。高温IRスペクトルでは、300℃で1時間加熱した後でもOH伸縮振動は観測され、高温状態で水が保持されていることが証明された。また、この水は400℃で加熱した後に消失した。これは、マクロサイクルの面間距離が大きくなることで隙間ができ、ここから水分子が徐々に放出されたと考えられる。また、水の代わりにアンモニア分子の包接を試みた。マクロサイクル溶液にアンモニアのメタノール溶液を添加すると、水包接体と異なる物質を得た。MALDI-TOF MassとIRスペクトルから、アンモニア分子の包接を示唆する結果を得た。XRD測定では水包接体と類似の回折パターンを得ており、今後は単結晶X線構造解析を行う予定である。さらに、水の一次元構造を光ファイバのような信号媒体に利用することを目指し、LB法を用いた単分子膜の作製を行った。現在、この分子膜の構造を解析中であるが、将来的には積層膜を作製してナノデバイスを開発する予定である。
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