研究概要 |
今日,分子認識化学の研究は飛躍的に発展し,多彩な機能を集積した超分子化学へと展開されている.新たなホスト分子の開拓は,これらの研究の基盤となる上,高性能触媒,高感度センサー,精密分離材料などの先端機能性材料の創製にも欠かせない.交付二年目となる平成20年度においては,新規ホスト分子となるアザカリックスアレーンを合成し,以下の2つの観点から物性の評価を行った. (1) 酸化挙動:アザカリックス[6]アレーン完全メチル化体を合成し,分子構造と結晶構造の解明,ならびに酸化挙動を評価した.その結果,同化合物の酸化挙動は,溶液中での分子運動と密接に関係していることを見出した.また,より小さな環サイズの誘導体との比較を行い,高スピン状態を達成するための分子設計指針を提示した(Heterocycles, 2008, 541). (2) 気体吸蔵特性:アザカリックス[6]アレーンヘキサメチルエーテルおよびアザカリックス[7]アレーンペンタメチルエーテルを合成し,これらの化合物のヘキサン包接結晶から溶媒を除去すると,得られた微粉末結晶が,大気の主要四成分の中で二酸化炭素を選択的かつ迅速に吸蔵することを明らかにした(Chem. Eur. J., 2008, 14, 6125. J. Org. Chem., 2008, 73, 7748).
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