アルコールの触媒的直接塩素化反応において、塩化ガリウムと酒石酸の組み合わせが、きわめて効率よい触媒系として作用することを見いだした。ガリウムのルイス酸性が巧みに反応系において、チューニングされた結果であることを反応機構の考察、検討において明らかとした。官能基化された基質においても効率よくヒドロキシ基部位で反応が進行し、合成化学上重要な系の確立に成功した。 ゲルマニウムの還元的マンニッヒ反応およびアルドール反応において、その還元力の高さとルイス酸性の低さ(中程度であるとの意)により、一般的に問題であった副反応を全く起こすことなく進行することを見いだした。分子軌道計算により詳細なゲルマニウムのルイス酸性の知見を得た。これまでゲルマニウムのルイス酸性に起因する反応開発はなされておらず、本研究がその萌芽的役割をはたすと考えられる。 インジウムを用いた触媒的炭素-炭素結合反応を2つ見い出した。ひとつは、アルケニルシランとアルコールの直接カップリングであり、従来ほとんど報告されていない型の反応である。これはインジウムの耐プロトン性が顕著に作用した例としてあげることができ、多くの基質に適応可能である。また、エステルを出発物とするFriedel-Crafts反応を見いだした。これは、インジウムが反応系中で巧みにルイス酸としての機能を発揮し、かっ基質等に捕捉されない程度のルイス酸性を保持していることが鍵である。 以上の様に金属化学種のルイス酸性を調整し、各種反応に適応させることで、多くの新反応開発に成功した。
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