研究概要 |
前年度までに明らかにした8-G-1-(アリールエチニルカルコゲナ)ナフタレン(1)の構造制御因子と第16族原子およびエチニル基の特性を活用して「拡張超原子価化合物を複数のエチニル基で架橋させた長鎖・直線状化合物の合成と構造決定および物性評価、さらには理論的解明」を目指して1-(8-p-MeC_6H_4SeC_<10>H_6)Se(C≡CSeC_<10>H_6Se)_nC≡CSe-(C_<10>H_6SeC_6H_4Me-p-8')-1'[2(n)=0)and3(n=1)]を合成した。次にこれまでの知見をもとに構造決定因子について検討を行った。2のX線結晶構造解析の結果、セレン原子間の距離はファンデルワールス半径の和より0.7Å程度短く、Se---Se-C≡C-Se---Seの6原子がほぼ直線状に配列した構造であった。量子化学計算により、2が6c-10e多原子直線状結合を有し、構造の安定化に寄与していることが明らかとなった。また溶液状態の構造についてNMR化学シフトおよび量子化学計算を用い検討を行った。2,3ともにセレン原子とエチニル基が直線状に配列した構造をしており、溶液状態においてもそれぞれ6c-10e、10c-16e多原子直線状結合を有していると期待できる結果であった。種々の分析機器(NMR,MS,IR、UV、CV等)による測定や理論計算により非結合相互作用や結合様式を検討した。 これら検討の結果、今後エチニル基およびジアセチレン基が介在した拡張超原子価結合系の一次元構成単位としての展開が期待できることが明らかとなった。
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