研究概要 |
昨年の報告書でも示したように,2-ベンジルオキシカルボニルシクロペンタノンとシス-4-オキソ-2-ペンテナールとの反応で,塩基を用いるとMichael付加反応が進行し,プロトン性溶媒を含めた弱酸類を用いるとフラン生成が進行するということを見出した。このように,わずかな反応条件の差で全く異なる2つの反応を完全に制御して進行させることが可能な珍しい興味深い反応例である。また,キラル補助基として8-フェニルメンチルエステルを用いてフラン化反応を行うと,96% d.e.の非常に高いジアステレオ選択性で2位に第4級不斉炭素原子が導入できることを見出した。今回,アクセプターとして他の置換パターンのものを検討したところ,反応が遅くなるものの,置換基の増えたシス-3-メチル-4-オキソ-2-ペンテナールでも同様の反応が進行することがわかった。また,ドナーについては,2-ベンジルオキシカルボニルシクロペンタノンと同様にエノール化しやすい基質では反応が進行しやすいことが判明した。この結果をもとに,ドナーにキラル補助基として8-フェニルメンチル基をもつ1-オキソ-2,3-ジヒドロインデン-2-カルボン酸エステルおよび1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-カルボン酸エステルを用いたところ二置換・三置換のいずれのアクセプターを用いても87% d.e.以上の非常に高いジアステレオ選択性が発現することを見出した。また,新たに,窒素原子が隣接する環状ヒドラジン類について,α効果が反応性を上昇させるかどうか検討したところ,S_N2反応については,立体障害の効果の方が反応性に大きく寄与するという知見を得ることができた。
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