研究概要 |
タンデム環化反応とは一度環化反応が開始された後、続けて次の環化が引き起こされる反応のことであり、有機環状化合物を合成する効率的な手法として重要である。そこで本研究では二次元的タンデム環化反応から一歩進めて三次元的タンデム環化反応の開発を目指した。また、開発した反応により複素環プロペラ型化合物(複素環プロペラン類)の合成を行い、DNA、RNAや各種タンパク質の特定部位切断活性などをもつ化合物合成の可能性も含めて検討した。また、本反応を用いてシクロファン型大環状化合物の合成も検討した。前年度と同様に、反応基質のトリケトン類やアミド類は塩基存在下で相当する環状1,3-ジカルボニル化合物と種々のα-ハロケトン類との反応などから種々合成した。酢酸マンガン(III)を酸化剤として用い、各種アルケン類との三次元的タンデム環化反応を行った。本反応は基質および試薬の濃度、反応温度、圧力、雰囲気、反応時間などの反応条件に左右されるので、本補助金で購入したマイクロ波式有機化学反応実験装置を使用した酢酸還流温度条件下などの反応を調べた。その結果、昨年に引き続き相当する新規なジオキサ[4.3.3]プロペラン類やポリキナン型化合物を得るごとができた。また、収率も向上させることができた。同様の反応を用いた5~7員環から成るプロペラ型化合物の合成を昨年度に引き続き検討した。いくつかの反応では三次元的タンデム環化反応が途中で止まってしまい、プロペラ型化合物を得ることができなかった。これは予想されたプロペラ型化合物の前駆体であるビシクロ中間体を単離し、その中間体をLewis酸存在下でさらに分子内環化反応させることで、相当する5~7員環を含むプロペラ型化合物へ変換することができた。さらに、同様の反応を利用して構造的に興味あるシクロファン型マクロジオリド類の合成を21員環から56員環まで行うことができた。
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